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京都地方裁判所 平成4年(行ウ)16号 判決

京都府長岡京市今里貝川三番地の一五

原告

岡村武司

右訴訟代理人弁護士

岩佐秀夫

右同

吉田眞佐子

京都市右京区西院上花田町一〇番地の一

被告

右京税務署長 森垣省吾

右指定代理人

本田晃

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

一  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、原告に対し、平成二年一二月二五日付けでした原告の昭和六二年分ないし平成元年分の各所得税更正処分のうち、別紙1の右各年分の確定申告欄記載の総所得金額(事業所得の金額)を超える部分及びこれに対する右各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。

第二事案の概要

一  請求の類型(訴訟物)

本件は、原告が、被告のした各所得税更正処分及び過少申告加算税額の各賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)には調査手続上の違法及び総所得金額を過大に認定した違法があるとして、その取消を求めた抗告訴訟である。

二  前提事実(争いがない)

1  原告は、京都府城陽市久世八丁目一一番五に事業用建物(以下「事業所」という。)を有し、「岡村製作所」の屋号で鉄鋼業を営む、いわゆる白色申告者である。

2  原告の昭和六二年ないし平成元年(以下「本件係争各年」という)分の所得税の確定申告、更正処分、異議申立て、異議決定、審査請求、裁決の経緯は、別紙1記載のとおりである。

三  争点

1  調査の適法性

2  推計の必要性

3  推計の合理性

四  原告の主張

1  調査の適法性(争点1)について

被告は、次の違法な税務調査に基づき、本件各処分をした。

(一) 客観的な調査の必要性がないのに調査した。

(二) 事前通知をしない。

(三) 第三者の立会いを認めない。

(四) 調査理由の開示がない。

(五) 調査状況を録音するためのテープレコーダーの使用を認めない。

(六) 被告は、本件調査の早い段階から原告自身に対する調査もせず、承諾なしに取引先に対する反面調査を行った。特に、反面調査が行われた後、原告は反面調査先の多くから取引を打ち切られたが、このような納税者に被害を及ぼす税務調査は許されない。

2  推計の必要性(争点2)について

被告が行った原告の事業所得の金額(総所得金額と同額である)の推計は、前示違法な税務調査に基づくもので、調査を十分に尽くしたといえないから、推計の必要性がない。

3  推計課税の合理性(争点3)について

(一) 被告が、本件推計課税を行うための資料収集として、大阪国税局長が特定の各税務署に対し同業者の売上金額等必要事項につき調査を求めた通達には、同業者の抽出条件として「製缶板金業」「製缶業」を挙げているが、これらの用語は、概念として周知でないから、右通達により同業者を抽出した各税務署の担当者が正確に右概念を理解して同業者を抽出したかどうか疑問である。

したがって、本件抽出同業者は、原告の業種と異なる可能性が大きい。

(二) 本件異議決定において採用された同業者と本件訴訟において被告が主張する同業者が異なる。これは、被告が訴訟に至って所得率の低い業者を恣意的に除外し、推計の計算の基礎となる所得率を高くしようとしたものである。

(三) 原告は、労働力の提供を、事業専従者及び家族以外の従業員から受けているのに、被告は、労働力の提供を事業専従者のみに頼っている業者も同業者として抽出している。

そのうえ、従業員の有無、人数は、利益率に大きな差をもたらすにもかかわらず、被告人は、人件費を特別経費に計上せず、売上原価または一般経費に含めている。

4  原告の特別経費の実額主張

原告は、特別経費として、次の支出をしている。

(一) 雇人費

原告は、本件係争各年中、竹村茂一(京都府城陽市寺田中大小九三)を雇用し、別紙2のとおり賃金を支払っている。

右の本件係争各年中の賃金は、昭和六二年度が二四四万六八〇〇円、昭和六三年度が二五一万九三五〇円、平成元年度が二三六万九一〇〇円である。

(二) 駐車場使用料

原告は、本件係争各年中、原告の業務用自動車二台を駐車させるため、小山酒店(京都府長岡京市今里五五丁目三-五五)から京都府長岡京市今里貝川五-一所在の「小山ガレージ」を賃借している。

右の本件係争各年中の賃料は、昭和六二年度及び同六三年度が一二万円、平成元年度は一二万二七〇〇円である。

五  被告の主張

1  調査の適法性(争点1)について

質問検査権の範囲、程度、時期、方法等は、税務職員の合理的な選択に委ねられており、調査の事前通知、理由の告知等も、その要件ではない。

本件税務調査手続に、社会通念上相当な限度を超えた違法な点はない。

2  推計の必要性(争点2)について

(一) 被告は、部下職員(以下「職員」という。)をして、被告の本件係争各年分の税務調査に当たらせた。職員は、平成元年一〇月一一日から平成二年一〇月一二日までの間、原告の事業所又は自宅に赴き(合計九回)、帳簿書類の提示等税務調査に対する協力を求めた。

その際、原告は、職員が架電(二回)して予め調査期日を打合せて臨場すると、事前に招集しておいた調査に関係のない第三者の立会いを要求し、また、職員が調査期日を事前に通知することなく臨場すると、調査を拒否したりテープレコーダーによる会話の録音を要求するなどして、税務調査に協力しなかった。

(二) このため、被告は、やむを得ず、原告の取引先等に対する反面調査を行い、後記3の推計により算定した金額に基づき本件各処分を行った。

(三) したがって、本件につき、推計の必要性が存在する。

3  推計課税の合理性(争点3)について

(一) 同業者の抽出経緯

大阪国税局長は、原告の事業所の所在地を所轄する宇治税務署長並びにその近隣地域を所轄する一二の税務署長に対し、本件係争各年分を通じて別紙3記載の全ての基準を満たす者を抽出するよう通達指示した。

これに従い、各税務署長が右基準に従って機械的に抽出した同業者は、別紙4の1ないし3記載のとおり八名であり、右各同業者の、本件係争各年分における、売上金額、算出所得金額(売上金額から、特別経費である建物減価償却費、利子割引料、地代家賃の必要経費、貸倒金、税理士報酬、減価償却固定資産の除却損以外の必要経費を控除した金額)、算出所得率(売上金額に占める算出所得金額の割合)は、別紙4の1ないし3の各欄記載のとおりであり、本件係争各年分の右各同業者の右各算出所得率の平均値(以下、「本件算出所得率」という。)は別紙4の1ないし3の平均欄記載のとおりである。

(二) 抽出同業者との類似性等

(1) 原告は、「製缶板金業」「製缶業」との用語の概念が周知でないとし、この抽出条件で本当に原告の同業者を抽出できたかどうか疑問とする。

しかし、「製缶板金業」「製缶業」という業種は、行政管理庁発行の日本標準産業分類に記載があり、右各業種は他の業種と明確に区別できるため、本件の同業者抽出作業において、原告と異なる業種のものが同業者として選ばれることはない。

(2) 本件異議決定において採用された同業者と本件訴訟において被告が主張する同業者が異なるのは、抽出条件が異なるからであり、本件訴訟段階での抽出作業が合理的である以上、原告の主張は理由がない。

(3) 原告は、抽出同業者の中には、労働力を事業専従者のみに頼る業者も含まれており、従業員を雇う原告とは業態が異なると主張するが、労働力の調達方法の違いは、同業者の間に通常存する程度の営業形態の差異に過ぎない。

(三) 売上金額

原告の本件係争各年分の売上金額は、別紙5の〈1〉「売上金額」欄のとおりであり、その明細は、別紙6の「売上金額明細表」欄記載のとおりである。

(四) 算出所得金額

原告の本件係争各年分の各算出所得金額は、別紙5の〈3〉「算出所得金額」欄記載のとおりである。これらの金額は、いずれも右(三)の各売上金額に、本件算出所得率をそれぞれ乗じて算出したものである。

(五) 特別経費の金額

(1) 利子割引料(当事者間に争いがない)

別紙5の〈4〉「利子割引料」欄記載のとおりであり、その明細は、別紙7「利子割引料の明細」記載のとおりである。

(2) 建物減価償却費(当事者間に争いがない)

事業所の建物に係るものであって、その金額は、別紙5の〈5〉「建物の減価償却費の計算」記載のとおりであり、その計算経過は、別紙8「建物の減価償却費の計算」記載のとおりである。

(3) 地代家賃(当事者間に争いがない)

原告は、事業所の敷地を合名会社中田ビルから賃借している。そのため、原告は、本件係争各年中、合名会社中田ビルに対し右賃料を支払っており、その金額は別紙5の〈6〉「地代家賃」欄記載のとおりである。

(六) 事業専従者控除額(当事者間に争いがない)

別紙5の〈8〉「事業専従者控除額」欄記載のとおりであり、明細は、別紙9「事業専従者控除額の明細」記載のとおりである。

(七) 事業所得金額

原告の本件係争各年分の事業所得の金額は、前記(四)の各算出所得金額から、(五)の各特別経費及び(六)の事業専従者控除の金額を控除した金額であり、別紙5の〈9〉「事業所得の金額」欄記載のとおりである。

金額は、昭和六二年分が六五七万八一四七円、昭和六三年分が六三一万三〇一二円、平成元年分が一〇〇五万六二〇〇円である。

4  原告の特別経費の実額主張に対する反論

(一) 雇人費

雇人費は、売上金額と対応関係にあると認められから、売上原価に含めるべきであり、特別経費ではない。

(二) 駐車場使用料

これについては、原告が事業用として駐車場を借りていたとの証拠はなく、原告の主張は認められない。

第三争点の判断

一  調査の税法性(争点1)について

1  所得税法二三四条一項は、税務署等の調査権限を有する職員において、諸般の具体的事情にかんがみ、客観的必要があると判断される場合に、質問し、検査を行う権限を認めたものである。

この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等の実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられている。また、実施の日時場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的な告知は、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているものではない(最決昭四八・七・一〇刑集二七巻七号一二一一頁、最判昭五八・七・一四訴務月報三〇巻一号一五一頁)。

そして、調査の客観的必要性は、過少申告の疑いが存する場合のみならず、申告の真実性、正確性を確認する必要が存する場合も含まれ、右確認の必要性の存否は、税務職員の裁量的判断による。

また、いわゆる反面調査について特に納税義務者の承諾を得る必要はなく、質問検査を必要とする客観的理由が存在する限り、右の要件の下に質問検査権行使の一つとして反面調査を行うことができる。

2  そこで、本件税務調査を検討すると、職員による調査の必要性の判断、及び事前通知、調査理由の開示をしないこと、税務調査に第三者の立会いを認めないこと、テープレコーダーの使用を認めないこと、原告の承諾なく反面調査を行ったことなどにつき、調査担当職員に裁量権の濫用があるとか、本件調査の方法や程度が原告との利益衡量において、社会通念上相当な限度を越え違法であるとすべき事実は、本件全証拠によってもみとめられない

原告は、反面調査後、多くの反面調査先から取引を打切られる被害を被っており、当該税務職員は違法な調査を行ったと主張し、その旨に沿う証拠(甲一七、原告本人、証人岡村和男)もあるが、右各証拠の内容は曖昧、不合理な点が多くたやすく信用できないし、反面調査先からの取引打切の事実の有無及び取引打切と反面調査との関連性を裏付ける客観的で的確な証拠がないことから、原告の主張は、その前提事実が認められないため採用できない。

3  よって、前記の原告の主張1は失当である。

なお、原告は、比較法的観点及び日本国憲法の精神から、事前通知、調査理由の開示、第三者の立会権は憲法上当然に認められているとするが、同見解は、立法論としては格別、解釈論としては独自の見解であり、当裁判所の採用するとこなでない。

二  推計の必要性(争点2)について

原告は、本件の場合、税務調査を必要としなかったと主張するが、右一で述べたとおり、本件の税務調査は職員の裁量権の範囲内で行われたものというべきであるから、原告の右主張は理由がない。

また、証拠(甲十七(一部)、証人田辺芳男、原告本人(一部))、弁論の全趣旨によれば、被告の主張2(一)の事実が認められる。

右の事実によれば、被告が原告の本件係争各年分の各所得税を算出するについて、推計課税を行う必要があったことが認められ、これに反する証拠(甲一七、原告本人の各一部)は信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  推計の合理性(争点3)について

1  同業者の抽出経緯

証拠(乙一及び二の各1ないし13、証人小林正喜)によれば、被告の主張3(一)の事実が認められる。

右同業者の選定基準は、業種の同一性、事業所の近接性、事業規模の近似性等の点で同業者の類似性を判別する要件として合理的なものである。その抽出作業について、被告を始め各税務署長あるいは大阪国税局長の恣意の介在する余地は認められず、かつ、右調査の結果の数値は、青色申告書に基づいたもので、その申告が確定しており、信頼性が高い。抽出した同業者数は八名であり、各同業者の個別性は平均化されていると判断される。

そして、右各同業者の本件係争各年分の売上金額、算出所得金額、算出所得率は、別紙4の1ないし3記載のとおりである。

したがって、右各同業者の本件算出所得率を基礎に算出された原告の本件係争各年分の所得金額の推計には、特段の事情のない限り合理性があるものということができる。

2  抽出同業者との類似性等

(一) 原告は、大阪国税局長が同業者の抽出条件として「製缶板金業」「製缶業」を挙げているところ、同概念が周知でないため、大阪国税局長から通達を受けて抽出作業を行った各税務職員が適切に原告の同業者を抽出できたかどうか疑問であるとする。

しかし、証拠(乙三、証人小林正喜)によれば、「製缶板金業」は、主として温水缶、板金製煙突及びタンク、ドラムカン、ガス容器などの製造、並びに他の事業所のために溶接、折り曲げなどの作業を含む金属加工及び組立を行う業種であり、「製缶業」は、厚鋼板や形鋼を材料として、容器形状の工作、あるいは機械装置類の架台、フレーム枠、枠組みなどを製造する、いわゆる缶を製造する業種をいうこと、「製缶板金業」という業種は、行政管理庁発行の日本標準産業分類に掲載されていることが認められ、右認定事実に、同業者の抽出作業に携わる税務職員は、日頃から業種の認定を職務としていること、「製缶板金業」「製缶業」を理解していない税務職員がいたとしても、同職員は右日本標準産業分類等を調べたうえで抽出作業に当たると推認されることを考え併せると、本件の抽出作業において、担当税務職員が「製缶板金業」「製缶業」の概念を誤って理解し、原告と異なる業種、業態の業者を抽出したとは認められず、原告の主張は理由がない。

(二) 原告は、本件の異議決定の段階で採用された同業者と本件訴訟で主張されている同業者が異なるのは、被告の抽出方法が恣意的なためであるとする。

しかし、前記1で説示したとおり、本件訴訟で被告の主張する同業者の抽出方法及び抽出作業に、被告及び大阪国税局長の恣意的行為は認められない。結局のところ、原告は、異議決定の段階で採用された同業者と本件訴訟で被告の主張する同業者が異なるとの一事をもって、被告の抽出作業は恣意的であるとするものであって、原告の右主張は理由がない。

(三) 原告は、抽出同業者の中には、労働力の供給を事業専従者のみに頼る業者も含まれており、従業員を雇う原告とは業態が異なると主張する。

しかし、推計課税は、原告と同業者との間のみならず、同業者間に個々的な種々の条件に差異があることを当然の前提としつつ、ある一定の基準の下に業種、業態、事業規模類が類似していると認められる一群の同業者を抽出し、これを基礎として総所得金額を算出する課税方法であり、各業者間の労働力の調達方法の違いというのは、同業者の間に通常存する程度の営業形態の差異に過ぎず、同業者の平均値により吸収される。

そうすると、労働力を事業専従者のみに頼ろうが、他に従業員を雇おうが、それにより業態の同一性が否定される理由はない。

したがって、原告の右主張は認められない(雇人費が一般経費か特別経費かの問題は後記する。)。

3  売上金額

証拠(乙四ないし八の各1ないし3、九及び一〇の各1、2、一一ないし一六、証人小林正喜)によれば、被告が、反面調査によって把握し得た原告の本件係争各年分における売上金額は、別紙6「合計」欄及び別紙5〈1〉「売上金額」欄記載のとおり認められ、被告の主張額と同額である。

4  算出所得金額

右3認定の本件係争各年分の各売上金額に、前記1認定の本件各算出所得率を乗じて得られる原告の算出所得金額は、別紙5の〈3〉「算出所得金額」欄記載のとおり、被告の主張額と同額である。

5  特別経費の金額

(一) 利子割引料

当事者間に争いがなく、被告主張のとおり昭和六二年分が一三万三四五六円、昭和六三年分が五万五七七五円、平成元年分が五万四〇六八円である。

(二) 建物減価償却費

事業所の建物の減価償却費は、当事者間に争いがなく、被告主張のとおり昭和六二年分ないし平成元年分とも、一六万〇九九六円である。

(三) 地代家賃

原告事業所の敷地賃料は、当事者間に争いがなく、被告主張のとおり、昭和六二年分及び同六三年分が七八万円、平成元年分は八七万円である。

6  事業専従者控除額

当事者間に争いがなく、昭和六二年分及び同六三年分が一五〇万円、平成元年分が一七四万円である。

7  事業所得の金額(総所得金額)

原告の本件係争各年分の事業所得の金額は、前記4の各算出所得金額から、5の各特別経費及び6の事業専従者控除額を控除した金額であり、被告主張のとおり昭和六二年分が六五七万八一四七円、昭和六三年分が六三一万三〇一二円、平成元年分が一〇〇五万六二〇〇円である。

8  原告による特別経費の実額主張

(一) 雇人費

原告は、本件係争各年中、従業員を雇用した費用は、特別経費であると主張し、雇人費を計上する。

しかし、証人小林正喜の証言によれば、小売業、卸売業当事者の業種と異なり、原告の営む製缶板金業の場合、雇人費といった労働力の投下費用は、製品の原価費用を構成し、売上と密接な関係を有するものであることが認められる。

したがって、雇人費が事業主の個別的事情に左右される特別経費とは認めがたく、原告の右主張は前提において理由がない。

(二) 駐車場使用料

原告は、原告が業務用自動車二台のため本件係争各年中に支出した駐車場使用料を特別経費として主張し、その旨を裏付ける証拠として領収書三通(甲九ないし一一)を提出する。

しかし、右各領収書を検討すると、消費税導入以前の昭和六二年分、同六三年分の支払額と消費税導入後の平成元年の支払額が同額という不合理な記載があること、原告本人尋問の結果によれば、右各領収書はいずれも領収書に記載されている日にちではなく本件訴訟提起後に作成されたことが認められることから、右領収書をただちに信用することはできない。その他に、右駐車場使用料の支払を裏付ける的確な証拠はなく、加えて、駐車場の所在地は原告の住居地と近いが事業所とは隔たっていることから(駐車場の所在地と事業所の所在地が隔たっていることは公知の事実である。)、駐車場が事業用に借りられていたとするには合理的立証が必要なところその立証もなく、原告の右主張は採用できない。

第四以上のとおりであるから、前記7記載の各事業所得の金額(各総所得金額)の範囲内でなれさた被告の本件各処分はいずれも適法であって、本件各請求は理由がないから、これらを棄却する。

(裁判長裁判官 松尾政行 裁判官 遠藤浩太郎 裁判官中村隆次は、在外研修中につき、署名捺印することができない。裁判長裁判官 松尾政行)

別紙1

課税の経緯

〈省略〉

別紙2

給料明細書

〈省略〉

別紙3

(1) 青色申告書により所得税の確定申告書を提出していること。

(2) 製缶板金業のうち、主として製缶業(材料が無償支給でないこと。)を営む者であること。

(3) 右記以外の業種目を兼業していないこと。

(4) 事業所が茨木、吹田、枚方、門真、下京、右京、東山、伏見、宇治、奈良、大津、草津及び水口の各税務署のいずれかの管内にあること。

(5) 年間を通じて事業を継続して営んでいること。

(6) 売上金額が一一五〇万円以上、六四〇〇万円未満であること。

(7) 事業専従者が一名以上三名以下であること。

(8) 対象年分の所得税について、不服申立て又は訴訟が係属中でないこと。

別紙4の1

同業者の算出所得率表(昭和62年分)

〈省略〉

別紙4の2

同業者の算出所得率表(昭和63年分)

〈省略〉

別紙4の3

同業者の算出所得率表(平成元年分)

〈省略〉

別紙5

事業所得の金額の計算書

〈省略〉

別紙6

売上金額明細表

〈省略〉

別紙7

利子割引料の明細

〈省略〉

別紙8

建物の減価償却費の計算

〈省略〉

別紙9

事業専従者控除額の明細

〈省略〉

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